現在、WRC(世界ラリー選手権)やWEC(FIA世界耐久選手権)ではレースマシンの燃料として「合成燃料(eFuel)」が採用されています。日本ではスーパー耐久においてスバルBRZとトヨタGR86がバイオエタノール由来の合成燃料を使用しています。

合成燃料とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料のことです。石油と同じ炭化水素化合物の集合体で、ガソリンや灯油など、用途に合わせて自由に利用できます。

合成燃料は、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)と、発電所や工場から排出される二酸化炭素や大気中の二酸化炭素を使って製造することから、従来の化石燃料と違い、ライフサイクル上で大気中の二酸化炭素を増やすことがない、という点で“カーボンニュートラル”だと言われています。

あまり、大きく報じられた記憶はありませんが、日本では2006年から2012年にかけて実証実験が行われていました。なお、この頃、日本ではGTL(Gas To Liquid:二酸化炭素や水素の“気体”から合成燃料=“液体”)技術と呼ばれていました。

最近、eFuelで名を馳せているのは、ポルシェです。今年4月、ポルシェはチリのeFuel生産メーカー、HIFグローバルに出資し、チリのプンタ・アレーナスにe-Fuelのパイロット生産工場「Haru Oni」を建設に着手。Haru Oniプロジェクトはポルシェが主導して、ドイツSiemens Energy(シーメンス・エナジー)や米ExxonMobil(エクソンモービル)などと共同で実施し、風力発電の電力を利用してe-Fuelを製造する、と発表していました。

そんなHaru Oniでのe-Fuelのパイロット生産が、いよいよ始まったそうです。というわけで、eFuelを911に給油する写真が公開されました。年産13万l強なので、まだまだ大した規模ではありません。e-Fuel生産工場はアメリカやオーストラリアでも展開を見込んでおり、2025年を目安に年産550万lに拡大させ、その2年後には5億5000万lまで生産を拡大させる、と野心的な計画が発表されています。

eFuelはポルシェのオフィシャルレースでの採用、新車生産時の燃料として、ポルシェ・エクスペリエンス・センターで使用する燃料として、そして一般販売が見込まれています。

なお、現在の「コスト」は1lあたり11ドルと言われていますが、生産量を増やしていけばやがて6分の1にまでは下げられる、と言われています・・・。それでも現在販売されているガソリンよりも高いんですけどね。

経済産業省が合成燃料について興味深い記事を掲載していました。

経済産業省スペシャルコンテンツ「エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料『合成燃料』とは」より

国際エネルギー機関(IEA)はFCV(燃料電池車)の普及を全く想定していないようですね・・・。