水素は、その製造方法で“色分け”されています。日本でよく用いられるのは7色で以下の通りとなっています。

<グレー水素>:化石燃料(主に天然ガス)を水蒸気改質反応させ生産する水素。水蒸気改質反応時に副産物として多くの二酸化炭素が排出されてしまう

<ブルー水素>:水蒸気改質反応の問題点である水素の製造時に排出される副産物の二酸化炭素を回収して処理(地下地層貯蔵ないしは炭素を再利用)し、大気中に放出しないことで、二酸化炭素排出を実質ゼロにして生産される水素。

<グリーン水素>:二酸化炭素排出ゼロの再生可能エネルギーを用いて、水を電気分解して生産する水素。カーボンニュートラル実現のために最も効果的な水素製造方法で、技術者たちが切磋琢磨中。

<ターコイズ水素>:メタンの熱分解によって生成される水素。炭素は気体ではなく固体として生産されるため、二酸化炭素は排出されない。再生可能エネルギーの利用と、生成された炭素を永久に封じ込めることが必要。

<イエロー水素>:原子力発電の電力を用いて、水を電気分解して生産される水素。

<ブラウン水素>:石炭から生産される水素。製造時に多くの二酸化炭素が排出されてしまう。グレー水素に分類されることもある。

<ホワイト水素>:水素以外の製品生産時に副産物として生成された水素。生産は限定的

そのほか、

<レッド水素>:原子力発電の熱を用いた、熱分解水素製造

<ブラック水素>:日本では「ブラウン水素」に分類しているが、石炭から生産される水素

<ブラウン水素>:石炭ではなく、褐炭から生産される水素

という色分けをする人たちもいます。

ページ上部に掲載した写真は、アメリカのシンクタンク、「フロスト&サリバン」が用いているものです。そのなかで、気になる表記、<ゴールド水素>があります。グリーン水素は“綺麗そう”な響きがありますが、ゴールド水素は“何か凄そう・・・”と思わせてくれます。

化学で学んだことは「水素は全宇宙の元素のおよそ90%を占め、最も多く存在する物質である。 地球を構成する元素としては、酸素、ケイ素に 次いで3番目に多いのが水素」ということでした。それもそのはず、地球上では主に海水などの化合物の状態で存在しています。

驚かされるのは、オーストラリアです。なんと1930年代、油田調査のためにボーリングした場所(南オーストラリア州アデレード近郊)からから“天然”水素が検出されていたのです。ただ、当時はコストをかけて水素の掘削しても、大した需要が見込めなかったようです。このように天然モノの水素を<ゴールド水素>と呼ぶそうです。たしかに・・・、掘れば出てくる水素・・・、ゴールドラッシュのような雰囲気を感じてしまいます。

2023年、そんな水素“田”が再び注目を浴びています。名前も“そのまんま”な「ゴールド・ハイドロジェン社」が水素田の埋蔵量調査、掘削施設の建設を目論んでいます。この会社、2021年に設立されたばかりなのに、今年の1月13日にオーストラリアで上場しました。上場による自己資金調達は2000万ドルで、今後の調査費用とし、さらなる資金調達を目指している様子です。

それにしてもオーストラリアって、本当に恵まれた国ですね・・・。オーストラリア人は自らの国を「ラッキーカントリー」と呼びますが、資源に恵まれない日本からは特にそう感じます。適度に田舎で、適度に発展していて、政治は安定、周辺国との関係も良好、経済も発展していて、とにかく多くの資源を抱えています。

広大な土地を利用した太陽光発電や風力発電から、グリーン水素製造に力を入れていくのがこれからのオーストラリアですが・・・、まさかゴールド水素が採れるとは・・・。

なお、ゴールド水素、今、アメリカで操業停止した油田などで注目されています。オーストラリアのゴールド水素は“地質”特有のものらしいですが、アメリカでは油田における微生物の働きでゴールド水素が採れる、とちょっと話題になっています。

そういえば、日本でも操業停止した油田、チラホラありますよね・・・。ゴールド水素、採れちゃったりしませんかね?(笑)

あっ、そうそう。ゴールド・ハイドロジェン社、もう一点、注目すべきことがあります。非常勤取締役会長にアレクサンダー・ダウナーを招聘しています。誰じゃ、そりゃ?とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、オーストラリアの元外務大臣です。自身が執筆しているコラムでも宣伝する力の入れようです。