「リチウムイオン電池の中核部品である正極と負極は、現在、北米では生産されていません。そのため、米国の電池メーカーは、2030年までにこれらの材料に1億ドル以上を海外で費やすことになります」
なかなかインパクトあるメッセージです。テスラで16年間、CTOを務めた、J.B.ストローベル氏。2017年にリチウムイオン電池のリサイクル会社「レッドウッドマテリアルズ」を立ち上げています。使用済みバッテリーから貴重な金属やミネラルを回収することで、新しい材料の需要を減らし、廃棄物を減らすことを目指しています。当初は自動車産業に重点を置きますが、将来は消費者向けエレクトロニクスなどの分野に拡大する予定です。
一見、どこのリサイクル会社でも謡いそうな内容ですが、リチウムイオン電池のリサイクルは、いくつかの理由で困難な場合があります。
1.構造が複雑。リチウムイオン電池は構造が複雑で、さまざまな金属、ポリマー、電解質が混在しているため、再利用のために貴重な材料を分離することが困難な場合がある。
2.リサイクル率が低い。現在、リチウムイオン電池のリサイクル率は比較的低く、貴重な材料が大量に廃棄されていることになる。これは、インフラやリサイクル技術への投資不足が一因である。
3.汚染 リチウムイオン電池は、使用中や廃棄後に他の物質が混入し、貴重な金属やその他の成分を取り出すことが難しくなるため、リサイクルが困難な場合がある。
4.安全性への配慮 リチウムイオン電池は危険物であり、適切な取り扱いや処理が行われないと、安全上のリスクが生じる可能性がある。このため、これらの電池をリサイクルする際には特別な注意と警戒が必要であり、プロセスのコストと複雑さが増す可能性がある。
日本でのリチウムイオン電池のリサイクルに目を向けてみると、コバルトやニッケルといったレアメタルのリサイクルについてもあくまでも「再資源化」としての合金回収であり、回収品の純度や品質を鑑みると必ずしも「電池原料」として再利用されるわけではないんです。
レッドウッドマテリアルズでは、年間約6万台の新型電気自動車用電池の主要材料を提供できるだけの使用済み電池を受け取っているとしており、使用済み電池から99%以上の金属(ニッケル、コバルト、リチウム、銅を含む)を回収していると推定しています。また電池材料を生産し、電池製造のパートナーに負極用の銅箔と正極用の活物質を供給しています。現在パナソニック、フォード・モーター、トヨタ、ボルボなどの企業とパートナー協定を結んでいます。
TDKのホームページによるとリチウムイオン電池の劣化は電極自体の劣化、バッテリパックに内蔵された調整用コンピュータの不具合、バッテリパック内のセルバランスの崩れが挙げられるそうです。それでも「素材」そのものは復活できる、というのがレッドウッドマテリアルズの主張です。レッドウッドマテリアルズではリチウムイオン電池のリサイクルによって循環型社会が形成できる、とまで踏み込んでいます。
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