ヨーロッパのスタートアップ企業であるデスティナス社は、ヨーロッパからオーストラリアまでの移動時間を現在の20時間から4時間強に短縮できる水素エンジン搭載の旅客機の開発を進めています。同社は過去2年間、プロトタイプの「Eiger」をテストし、2022年末にテスト飛行に成功したと発表しています。そして今回、スペイン科学省はデスティナス社を戦略的イニシアティブに選び、水素を燃料とする超音速飛行の研究開発をさらに進めるための資金を提供することになりました。

企業、技術センター、スペインの大学などが、1,200万ユーロを投じてこのプロジェクトに取り組んでいます。デスティナスは、スペインのエンジン会社ITP Aeroと共同で、水素エンジンの試験施設を建設しています。スペイン政府の助成金は、マドリード近郊に、空気で呼吸する水素エンジンが試される試験施設の建設に充てられます。また、1,500万ユーロの助成金プロジェクトでは、液体水素を使った移動方法に関する研究にも充てられます。

水素燃焼の主な副産物は熱と水であるため、水素発電はその環境配慮から多くの研究開発の対象になっています。メルボルンのRMIT大学の研究者たちは、音速の5倍のスピードで飛行するための動力と、飛行機がそのスピードで飛行する際に発生する極度の熱を冷却する触媒を3Dプリントで作成しました。この速度で飛行する将来の民間航空会社は、ロンドン-ニューヨーク間を約90分で飛行することができます。

デスティナス社は、この技術により、フランクフルトからシドニーまでのフライトがわずか4時間15分、フランクフルトから上海までのフライトが2時間45分となり、現在より8時間短縮できるとしています。また、このプロジェクトは、スペインが様々な分野で水素を利用した輸送用車両の開発・製造において先頭を走るための取り組みの一環でもあります。

デスティナス社は、水素専用エンジン技術の加速に取り組みながら、H2ポストコンバスタージェットエンジンの飛行試験をまもなく実施する予定です。スペイン政府は、欧州委員会の「Next Gen」ファンドによる戦略的プロジェクトを通じて、経済の回復力と変革計画の一環として、水素推進技術の開発に多額の投資を行っています。これは、スペインを再生可能な水素の生産と様々な分野での水素ベースのモビリティ開発で世界のリーダーにすることを目的としたスペインのPlan Nacional del Hidrógenoと合致。

なお、デスティナス社の取締役にはスペイン人元宇宙飛行士、ペドロ・デュケを迎えています。

また、アドバイザリーボードには、フランス軍の宇宙担当司令部のトップ、ミシェル・フリドリング少将を迎えており・・・、ちょっとエキサイティングな響きすら漂っています。

エコ、エコ、とやや食傷気味になりがちな今日この頃、水素活用で今まででは考えられなかった飛行時間短縮、ってお話、いいですよねぇ。