ポールスター(ボルボ)のバッテリーシステムを流用するプレジャーボート、アメリカズカップに参戦する「エミレーツ・チーム・ニュージーランド」がテンダーボートへの燃料電池を搭載など、小型船舶に脱内燃式機関の押し寄せていることは以前からお伝えしている通りです。
ポルシェはオーストリアのFrauscher(フラウシャー)と共同で電動ボート「850ファントム・エアー」の生産に乗り出します。デリバリーは2024年を予定していて、電動技術には次世代のポルシェ・マカン(コンパクトSUV)が採用するものが搭載される、と発表されています。
850ファントム・エアーはフラウシャーが既にラインナップしている「858 ファントムエアー・デイクルーザー」をベースにしており、全長8.67メートル、全幅2.49メートルの船体をそのまま引き継いでいます。ポルシェは、ロードカー用に設計されたドライブテクノロジーを水上用に最適化したそうです。
次世代マカンのベースとなるプレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)と名付けられた最先端の自動車駆動技術を流用しているんですって。総容量約100kWhのリチウムイオン高電圧バッテリー、最新世代の永久励磁同期電動モーター(PSM)、そして制御系は次世代マカン譲り。ポルシェの800ボルト技術により、DC急速充電ステーション、AC充電、いずれにも対応しているんだとか。
詳しいスペック等は明かされていませんが、ポルシェが現在、販売している電気自動車「タイカン」と同じような加速が体・感できるとか・・・。
そして同じくドイツからもうひとつ、プレジャーボートの話題がありました。なんでもALVA YACHTS(アルファ・ヨッツ)と呼ばれる造船会社が、太陽光発電、電気モーター、燃料電池を組み合わせたボートを発表しているんです。
まだ2020年に創業したばかりの会社ですし、今、脱炭素でもてはやされるキーワードが並んでいる気配がして・・・、穿った見方をしていたのですが既に2艇が建造中なんだそうです。そして、新たに太陽光発電、電気モーター、燃料電池のほかに風力(発電ではなく硬翼帆)を組み合わせたボートも受注した、というではありませんか。
アルファ・ヨッツ、元々は2013年創業の「ピカ・ヨッツ」という会社で、20~30フィートの電動ボートを造船していたそうです。2019年までに約50艇が造船され、アルファ・ヨッツへと“進化”を遂げました。きっかけは、2018年のシンガポール・ヨットショーだったそうです。
ピカ・ヨッツを経営していた、ホルガー・ハン(そもそもボート・デザイナーです)が「サイレント・ヨッツ」に勤務していたマティアス・メイと出会い、新しい脱炭素ボートの話で盛り上がり、二人でアルファ・ヨッツを創業することになったんですって。
「え?納入実績はまだゼロ?別にいいじゃんない、面白そうなボートだから俺が買わせてもらうよ!」という太っ腹な投資家/顧客を抱えていらっしゃるのでしょう・・・、ちょっと羨ましい話でもあります。もっとも、この手の投資家/顧客にはちゃんとした「結果」が求められるものです。
完成航行が待ち遠しいです。そして・・・、大型船舶の脱炭素化も進めば・・・。