今、アメリカ・カリフォルニア州が水素ステーションの拡充のために向こう10年間で3億ドルを支出する“かも”、という話が物議を醸しています。現在、カリフォルニア州で販売されている燃料電池車(乗用車)はトヨタ・ミライとヒュンデ(現代自動車)・ネクソの2モデルのみ。累計販売台数でも1万2000台くらい、と見積もられています。対する電気自動車のカリフォルニア州における累計販売台数は76万台です。
既にカリフォルニア州は水素ステーション拡充のために2億ドルが拠出したんですって。3億ドルの追加拠出には、方々から批判が出ています。その最大の理由は・・・、水素の生成方法です。“販売されている水素の大部分は天然ガス由来じゃないかぁ!”という批判です。電気だって・・・、と突っ込みたくなりますが、カリフォルニア州の30%強は再生エネルギー(太陽光、風力、水力など)を実現できているとか。なお、カリフォルニア州では2045年までには再生エネルギーによる発電を100%にする、という目標を掲げています。蓄電池の設置だけでなく、電気自動車を蓄電池代わりにすれば・・・、と目論んでもいるようです。
もとい。
水素の生成については、様々な技術革新が進められています。電解の高効率化は様々な研究機関が取り組んでいることですが、読解が難しいことも多々あり全てを取り上げているわけではありません・・・。もっとも“露天掘り”できる水素もあるとかで、個人的には水素を面白いエネルギーだなぁと本気で思っている次第です。カリフォルニア州の水素ステーションへの資金拠出で水素生成方法に批判の矛先が向いていますが・・・、かくいうカリフォルニア州の「NewHydrogen」という会社がカリフォルニア大学サンタバーバラ校(以下、UCSB)と共同で面白い研究をしています。
水を電気で分解して水素を取り出すのではなく、水を排熱で水素を取り出すことを研究しているのです。クリーンなだけでなく、世界で最も安い水素になるかもしれない、と同社では期待を持たせてくれる発表をしています。今日、環境に優しい水素を生成するには、太陽光や風力発電といったクリーン電力を利用した水の電解です。クリーン電力は非常に高価であり、今後も高価であり続けるでしょう。実際、現在、この電解における水素生成コストの73%は「電力」が占めている、と同社では見積もっています。そして同社が目をつけているのは原子力発電所や、鉄鋼、ガラス、セラミックなど、日常生活で使用する多くのものを製造する工業プロセスから出る廃熱です。
水は2,500℃を超える温度で、ほぼ100%の効率で水素と酸素に自然分解することが知られています。しかし、そのような温度は容易に達成できるものではなく、管理も容易ではありません。UCSBの研究チームは、溶融触媒液の特徴を利用して、1つの酸化還元化学ループで連続的に水を直接分解し、別々のチャンバーで水素と酸素を生成する画期的な技術を開発しているんですって。溶融触媒液は1つのチャンバーで還元、別のチャンバーで酸化というプロセスを連続的に行い(NewHydrogen ThermoLoop™)、入力は熱と水だけ。しかも、1,000℃未満で生成可能かつ純水ではなくても水素生成ができるそうです。
12兆ドル、とゴールドマン・サックスが見積もっているグリーン水素市場、面白い技術がたくさん登場しそうな雰囲気です。引き続き注視していこうと思います。
あっ、そうそう、カリフォルニア州の水素ステーション拡充のための資金拠出ですが・・・、卵が先かニワトリが先か、ですよね。脱炭素社会への先行投資として、アメリカらしいアドベンチャラスなリスクテイクをしてもらいたいものです。