アントワープ・ブルージュ港は、ヨーロッパのグリーンエネルギーのゲートウェイとしての地位を確立し、2050年までにカーボンニュートラルな港になることを目指しています。これを達成するため、ブルージュ港湾局は現在、同局が保有するサービス船隊のグリーン化に本格的に取り組んでいるとのことです。具体的には19隻のタグボートやサービス船、浚渫船などのグリーン化です。

ブルージュ港湾局では既に2隻のディーゼルハイブリッドをパワーユニットに持つ監視船を運航しています。そして、昨年末から投入されているのが、世界初の水素を燃料とするタグボート「ハイドロタグ1」です。CMB TECHによって建造されたこのタグボートは、水素とディーゼルの混合燃料で動く2基の「BeHydroデュアル・フューエル・エンジン」を搭載しています。

端的に言えば水素内燃エンジンなのですが、水素を点火するために少量のディーゼル燃料が用いられます。また、水素駆動に何らかの問題が発生したなら、完全にディーゼル燃焼に切り替えることもできる、というものです。タグボードは信頼性が要ですから、2基のエンジン、2タイプの燃料で、排出ガスの大幅削減を図りながらいわゆる冗長化もしている、というわけです。

ハイドロタグ1の全長は30mで、2,000kWのエンジンを2基搭載しています。船内には54本の水素ボンベがあり、415kgの水素を搭載することができます。これで12時間シフトに対応できるそうです。なお、導入済みのディーゼルハイブリッド船も、我々がクルマで想像するようなものとはちょっと異なり、バッテリー駆動とディーゼル駆動の2系統のパワーユニットなのだそうです。バッテリーだけで12時間駆動させるには、バッテリーが大きく重たくなり効率が悪くなります。そこで絶妙なバランスでバッテリー駆動とディーゼル駆動の配分を行っているとか・・・。

ちなみに、この先ブルージュ港湾局ではメタノールとディーゼルの混合燃料で稼働できるよう改造された、低排出ガス・タグボートの導入も予定されているそうです。現実的な運用をしながら温室効果ガスの削減を図る・・・、良い取り組みですね。国連の専門機関、IMO=国際海事機関は、世界中を航行する船舶から排出される温室効果ガスを2050年頃までに実質ゼロにする目標を採択しています。温室効果ガスの排出量を2008年に比べて2030年までに20から30%、2040年までに70から80%削減し、2050年頃までに実質ゼロにする目標を175の加盟国で掲げています。