ドイツ航空宇宙センター(DLR)が2024年10月28日、世界でも類を見ないメガワット級の燃料電池試験施設「BALIS」をエンプフィンゲンに開設しました。現在、移動用途で市販されている最大級の燃料電池システムは数百キロワット程度です。しかし、大型船舶や航空機の動力として燃料電池を活用するためには、その数倍の出力が必要です。
BALISでは、1.5メガワットという大規模な出力を目指し、複数の燃料電池を組み合わせたシステムの開発・検証が行われます。BALISの特徴は、その柔軟な設計にあります。輸送コンテナをベースとしたモジュール式の施設で、燃料電池システムだけでなく、電気モーター、水素供給設備、制御システムまで、推進システム全体を包括的にテストできます。
特に注目すべきは、液体水素(LH2)の大規模な取り扱いに関する研究設備です。マイナス253度という極低温で扱う液体水素は、気体水素よりも高密度で効率的な貯蔵が可能ですが、その取り扱いには特殊なインフラが必要です。
この施設の重要性は、産業界からの高い関心からも明らかです。今後3年間の利用予約は既に埋まっており、スタートアップから大手企業まで、様々な企業がプロジェクトに参画しています。H2FLY、PowerCell、Air Liquideといったエネルギー関連企業から、Diehl Aviation、GE Aerospace、Deutsche Aircraftといった航空関連企業まで、幅広い分野の企業が参加しています。
特に航空分野において重要な役割を果たすことが期待されています。地上での安定した推進システムから航空機での実用化まで、長期的な開発と検証が必要な航空分野において、BALISは不可欠な研究基盤となるでしょう。
連邦デジタル・交通省は本プロジェクトに2,600万ユーロ(約42億円)を投資し、さらに液体水素関連設備に300万ユーロ(約4.8億円)の追加投資を行っています。これは、2045年までの気候中立性達成に向けたドイツ政府の本気度を示すものと言えるでしょう。
今後の研究成果に大きな期待が寄せられています!