全固体電池は、航続距離を大幅に伸ばすことで、電気自動車に次の大きな技術的飛躍をもたらす可能性があります。この未来に向けた最新のステップとして、BMWグループはソリッドパワー(Solid Power)社との共同開発契約を拡大し、ドイツ・ミュンヘン近郊の「Cell Manufacturing Competence Center」でプロトタイプ組立ラインを構築することになりました。

プロトタイプの組立ラインを設置する前に、BMWのスタッフはソリッドパワー社と協力してセル製造プロセスを最適化。自動車用ソリッドステート・コンポーネントのテストは、2023年に開始されます。この技術の車両デモカーは、2025年以前に登場する予定だそうです。「ミニ」や「ロールスロイス」を含めた、BMWグループ全体で2030年までに販売車両の半数は電気自動車になる、と目論んでいます。

まぁ、ロールスロイスは2030年までにEVメーカーになると宣言していますし、電気自動車ならではのメリットに預かれるでしょう。電気自動車はバッテリーが基本的には重たいので、必然的に低重心になり乗り心地が良いです。車両重量が重たいゆえにワインディングで厳しいだろうと思われがちですが、油圧サスペンションや4輪のトルク制御技術の進化により驚くほど速く駆け抜けます。

と同時に、電気自動車=クルマからの排出ガスゼロ、という点では周囲に与えるイメージも良くなります。本当に環境に優しいか否かは・・・、議論の余地があると思います。また、バッテリーやヘビー級ゆえに足回りの寿命は気になるところですが、ロールスロイスの顧客は超富裕層ゆえに維持費の高さは問題視されないでしょう。

もとい。

BMWはソリッドパワーへライセンス料2,000万ドル支払い、パイロットバッテリー生産ラインの“複製”を建設します。ソリッドパワーは2020年に固体電池パックのプロトタイプの生産を開始しています。当時の物は1㎏あたり330Wh、20a/hという性能でした。室温であれば15分以内に充電量の50%を回復する、というものでした。BMWではこのプロトタイプの設計を元に77kW/hのバッテリーを開発し、リチウムイオン電池と比較すると重量を46%削減、航続距離を16%向上、コストを40%削減できる、としています。

日本勢は全固体電池をプラグインハイブリッド車で導入しそうな勢いでしたが最近、ちょっと静かですよね。日経アジアが過去に取り上げた記事によると、固体電池にまつわる特許申請件数「トヨタは1,331件、パナソニックは445件」らしいです。東芝のリチウムイオン二次電池用酸化物系負極関連技術・・・、とやらも全固体電池がらみですし、日産も全固体電池の量産化うんぬんの話題がありますよね。

各社、計画変更なのか、嵐の前の静けさなのか・・・、非常に気になるところです。