去る8月24日、フランスのAlstom社がドイツ・ニーダーザクセン州に「世界初となる燃料電池列車の本格運用を開始」というプレスリリースを発表しました。実は2018年から試験走行はしていたものの、ようやく一般乗客を乗せての本格運用が開始した、とのことです。
カタカナが続きますが・・・、クックスハーフェン、ブレーマーハーフェン、ブレーマーフェルデ、ブクステフーデなど、ドイツの地方都市を結ぶ路線には現在、15両のディーゼル機関車が導入されていますが、これから14両の燃料電池列車「Coradia iLint」と入れ替えるそうです。
ドイツのNIP(水素燃料電池技術革新国家プログラム)による助成金を得て、Alstom社のドイツ拠点ならびにフランス拠点で開発が進められたそうです。Coradia iLintは今年「ドイツ・サステナビリティ・アワード」を受賞した、とも発表されています。
燃料電池で走るCoradia iLintの航続距離は1000㎞、最高速度は140㎞/hだそうです。ブレーマーフェルデにある水素充填ステーションには、500気圧の高圧貯蔵タンク64基(総容量1800kg)、水素コンプレッサー6基、充填ポンプ2基が設置されています。将来的には電気分解と再生可能エネルギーによる水素のオンサイト製造も計画されており、そのための拡張スペースも用意されているとか。
燃料電池ですから、排出ガスはゼロ。実に素晴らしいです。ちょっと気になるのは・・・、Alstom社が謳う「水素1㎏が約4.5lのディーゼル燃料に代わるため、列車の燃料として水素を使用することは、環境への負担を大幅に軽減する」という部分です。排出ガスはゼロで十分な環境アピールなのに・・・、使用燃料の「体積」が少ない、というところからエコなイメージを植え付けようとしているように感じられてなりません(笑)。
一方、中国ではバラード社(カナダ)が手掛けた燃料電池路面電車の本格運用が、2019年末から広東省仏山市で始まっていますね。当初は総延長6.6㎞、10駅で、総延長17.4㎞、20駅まで拡大することが予定されています。また、燃料電池バスも本格運用されていて、来る水素社会への取り組みに積極的です。
7月には広東省珠海市発展改革局が「水素エネルギー産業発展規画(2022~2035年)」なるものを発表したばかりです。カーボンピークアウト、カーボンニュートラルの実現に向け、水素エネルギー産業チェーンの技術開発・導入を積極的に実施し、広東・香港・マカオグレーターベイエリアを他都市へ向けたモデルケースにする、と華々しく発表していました。
<2025年まで>
水素ステーションを15カ所以上、主導的役割を果たす水素エネルギー産業園区を1カ所建設し、水素の年間供給能力を3万トン以上。燃料電池自動車の累計普及台数を520台以上、燃料電池の分散型電源、コージェネレーション(熱電併給)設備、予備電源などを50セット以上とする。水素エネルギー関連企業10~15社を誘致または育成し、水素エネルギー産業の総生産額100億元(約2,000億円、1元=約20円)を達成
<2030年まで>
水素エネルギー産業チェーンを徐々に完備し、産業配置を最適化。広州市、深セン市、仏山市、東莞市、香港、マカオなどの周辺都市との間で産業チェーンを相互補完して融合を進め、水素エネルギー産業発展共同体を形成
<2035年まで>
水素エネルギー産業によって交通、電力、工業、建築などの幅広い分野をカバーし、第5世代移動通信システム(5G)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)などの次世代技術と深く融合した「水素エネルギー+知能」産業エコシステムの構築
機械翻訳したものを抜粋したのでちょっと小難しい響きですが、要は水素社会への取り組みに本気であることは伝わってきます。最近、ニュース報道では電気自動車関連の話題が多いように見受けられますが、本命は水素だと思っています。