メルセデス・ベンツの電動バス「eCitaro Fuel cell」に関する面白いプレスリリースがありました。eCitaro Fuel cellは電動バスであるeCitaroにトヨタ製の燃料電池をレンジエクステンダー(航続距離延長のため)として搭載しているバスです。
燃料電池が生み出した電力は電気モーターを直接駆動することはなく、あくまでも駆動用バッテリーに電力を供給するもの、と説明されています。そして、「電動バス」であることが強調されていることが、ちょっと面白いです。ドイツでは燃料電池車であるよりも、電動車であるほうがイメージが良いのでしょうか・・・。
わざわざ「eCitaro Fuel cell – それは資源を保護する手段です。主なエネルギー源として、比較的安価なバッテリーの電力を使用する一方、高価な水素を高効率で利用します」と謳っています。そして、最高出力60kWのトヨタ製燃料電池を搭載していますが、最大30kWまでに抑えることで水素の消費量を抑制しているそうです。
そんなeCitaro Fule cellの本格販売を前に、メルセデス・ベンツは同車による360㎞にも及ぶアルプス越えに挑んだそうです。目的は斜度15%に及ぶ過酷な道を走ること、氷点下でのバッテリーや燃料電池の稼働率確認、そして実走行における航続距離の確認などいわゆる実証走行試験ですね。
結果、eCitaro Fuel cellは難なくアルプス越えをしました。燃料電池の排熱を車内のヒーターに用いることで、バッテリー消費を抑え、回生ブレーキでは出力285kWでの充電が可能だった、と記されています。個人的に面白いな、と思ったのは「勾配があるにもかかわらず、燃料電池は20~30kWの最も効率的な出力範囲で作動した」と記されていたことです。あくまでもレンジエクステンダーに過ぎないのに・・・。また、アルプス中腹のアルゴイでは“念のために”ちょっとだけ充電した、とも記されています。
eCitaro Fuel cellの航続距離は400㎞とカタログでは謳われていますが、総走行距離368㎞を経てバッテリー残量は56%、水素タンク残量は42%だったそうです。前述の「ちょっとだけ充電」がどれだけ功を奏したのか、レンジエクステンダーとしての燃料電池がどれほど有用なのか・・・、今回のプレスリリースではちょっとわかりません(笑)。
実証実験の成果発表というよりも、「アルプス越え」を謳いたかったようで、昔ながらのヨーロッパ車のメルクマールが今なお重んじられていることが垣間見られるものでした。
なお、電動バスであるeCitaroのカタログ上航続距離は320㎞と謳われています。240㎏もある燃料電池を搭載して、たった80㎞しか航続距離を伸ばさないんですね・・・。
余談ですが・・・、eCitaro Fuel Cellとなぜか合成されたとおぼしき開発陣たちの写真も、また面白いです。