様々な自動車メーカーによるハイブリッド車の投入が相次いでいる現在ですが、相変わらず注目されるのは電気自動車ばかり。そして、「水素は死んだ」という声も聞かれる昨今ですが、ドイツの老舗自動車メーカーBMWは全く違う道筋を描いています。同社は2024年、次世代となる第3世代水素燃料電池システムの開発を発表し、2028年からの量産開始に向けて着々と準備を進めています。

新システムの最大の特徴は、従来比25%の小型化を達成したことです。パワー密度の向上により実現したこのコンパクト設計は、将来のBMW車両アーキテクチャーとの高度な統合を可能にし、顧客により多様なドライブシステムのバリエーションを提供できるようになります。BMWでは、次世代プラットフォーム「Neue Klasse」との統合が想定されていることです。

BMWによると、第3世代システムは前世代と比較して「大幅に効率的」になっているとのことです。具体的な数値は明かされていませんが、航続距離の延長、出力の向上、そしてエネルギー消費量の削減を実現しているとされています。

現在テスト運用されている第2世代システムを搭載したiX5プロトタイプは、396馬力を発生し、WLTPサイクルで最大313マイル(約504km)の航続距離を実現しています。第3世代では、これらの数値がさらに向上することが期待されます。

BMWの水素技術開発において欠かせないのが、トヨタとの戦略的パートナーシップです。10年以上前にBMWが初の水素車両開発を検討した際、同社はトヨタから全システムを調達していました。しかし、第2世代では役割分担が変化し、BMWが全体システムを設計し、トヨタが燃料電池を供給するという協力体制に発展しました。

この日独の技術者たちによる協業は、両社の強みを活かした理想的な組み合わせと言えます。BMWの車両統合技術とトヨタの燃料電池技術が融合することで、より実用的で魅力的な水素車が生まれることが期待されています。

現在のところ、どの車両に第3世代システムが最初に搭載されるかは明らかにされていませんが、業界関係者の間では次世代X5が最有力候補として挙げられています。新型X5は2026年の発売が予想されており、2028年に燃料電池車を投入というタイミング的にも合致します。

また、BMWは水素専用の「BMW Energy Master」という独自開発のインターフェースシステムも準備しています。これはバッテリーと車両の他のシステムを繋ぐ重要な役割を担い、今年後半にはNeue Klasse車両向けに生産開始予定です。

一部の自動車メーカーが水素技術から撤退する中、BMWやトヨタをはじめとする企業は依然として水素に大きな可能性を見出しています。確かに燃料供給インフラの不足という課題はありますが、ガソリンと同様の給油体験を提供できるクリーンな代替技術として、水素は重要な選択肢であり続けています。特に長距離走行や重量のある車両において、水素燃料電池は電気自動車よりも優位性を持つ可能性があります。

充電時間を気にすることなく、従来のガソリン車と同様の使い勝手を提供できる点は、多くのユーザーにとって魅力的でしょう。電気自動車一辺倒ではない、多様化した未来のモビリティ社会において、水素が果たす役割にますます注目が集まりそうです。