韓国政府は9月30日、再生可能エネルギーが集中している済州島および西海岸・南海岸地域において、最大100MW(メガワット)規模のグリーン水素製造実証プロジェクトを推進すると発表した、と朝鮮日報が報じています。

グリーン水素とは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーから得られた電力を使用して、水を電気分解することで製造される水素のことです。従来の実証実験は10MW以下の規模で実施されてきましたが、韓国政府は今年中に50MWまで拡大し、来年までに100MWの予備妥当性調査を申請する計画です。

「予備妥当性調査」とは聞きなれない言葉ですが・・・、大規模公共事業の実施前に経済性や実現可能性を評価する韓国政府の審査制度で、この承認を得てから本格的な事業が開始されます。

産業通商資源部は、この発表と同時に「超革新経済グリーン水素プロジェクト推進団」を発足させました。同推進団は、技術革新、実証・運用、産業誘致・支援、規制改善の各分野に小委員会を設置し、グリーン水素産業の促進に向けた税制改革および規制改革を加速させることを目指しています。

グリーン水素は、再生可能エネルギー固有の「間欠性」の問題に対処する安定的なソリューションとして注目されています。日照が強い時や風が強い時に発生する余剰電力を、水を分解して水素として貯蔵することができます。そして電力が不足する際には、貯蔵した水素を燃料電池やタービンを通じて再び電力に変換することが可能です。

エネルギー貯蔵の手段としては蓄電池もありますが、実は大規模・長期間の貯蔵には課題があるのです。蓄電池は自然放電が発生しますが、水素は長期間の保存が可能です。それこそ夏の余剰電力を冬まで貯蔵するようなスパンでの貯蔵が可能です。

また、膨大な量のエネルギーを貯蔵する場合、蓄電池では設置面積やコストが非常に大きくなりますが、水素は圧縮や液化によって効率的に貯蔵できます。当然、発電用途だけでなく、燃料電池車、産業プロセス、航空・船舶燃料など、幅広い分野で利用可能です。

現状、グリーン水素は製造コストが高く、水電解技術がまだ商業的に実用化されていないという課題に直面してきました。これに対して産業通商資源部の関係者は、「この実証プロジェクトを通じて、先進的な電解技術と実績を確保し、国内のグリーン水素製造能力と経済的妥当性を向上させていきます」と述べています。

この大規模実証プロジェクトは、韓国がグリーン水素分野における技術力を強化し、将来的な商業化に向けた重要な一歩となることが期待されています。