ヨーロッパにおける水素トラックの普及を加速させるため、6つの主要な水素充填ステーション運営会社が手を組み、新たな業界アライアンスを立ち上げました。2025年12月にフランスのリヨンで開催されたSolutrans展示会で発表された「水素インフラアライアンス(H2IA)」は、ヨーロッパ大陸全体における水素モビリティの課題に真正面から取り組む組織です。

H2IAには、HydriTEAL MobilityFountain FuelH2 MOBILITYVirya EnergyHympulsionという6つの企業が参加しています。これらの企業は合わせて、ヨーロッパ最大級の公共水素ステーションネットワークを運営しており、現在92カ所の水素充填ステーションを展開しています。

このアライアンスの最大の目的は、大型商用車や小型商用車向けの水素充填インフラを、ヨーロッパ全域で統一的かつ戦略的に整備することです。国境を越えた貨物輸送を支援できる信頼性の高いネットワークの構築を目指しています。

ヨーロッパにおける水素トラックの普及は、長年にわたり典型的なジレンマに直面してきました。トラックメーカーは充填ステーションネットワークが整備されなければ生産を拡大できず、一方でインフラ事業者は十分な台数の車両が走行していなければ大規模な投資に踏み切れないという状況です。

H2IAはこの膠着状態を打破するため、6社の戦略を統合し、欧州全体を見据えた単一の開発計画を提示します。アライアンスメンバーは「点と点をつなぐ」アプローチと呼ぶ戦略を採用し、主要な物流拠点間に水素充填の回廊を構築することで、長距離輸送事業者が確実にルートを計画できる環境を整備します。

H2IAは具体的な目標として、2028年までに39カ所の大規模水素充填ステーションを新設する計画を発表しました。推定1,800台の水素トラックが毎日充填できる体制が整うことになります。また、新設されるステーションは大型トラックだけでなく、日常的な小型商用車のフリート運用にも対応する設計となっています。

当該アライアンスはトラックメーカーや物流企業に対して、水素プラットフォームへの投資を決断する自信を与えることを狙っています。大規模な充填インフラが確実に整備されることで、車両メーカー側も生産体制の拡大に踏み切りやすくなるという好循環を生み出すことが期待されています。

アライアンス発足の直後、H2IAのメンバー企業は車両メーカーに対して協調したメッセージを発信しました。水素トラックと小型商用車の「展開を加速」するよう各社に要請し、市場に投入されるモデルが増えなければ、大規模な充填インフラがようやく出現し始めたこの重要な時期に、欧州のクリーン輸送への移行が減速するリスクがあるとさえ警告しています。

H2IAのもう一つの重要な目標は、ヨーロッパの初期水素ネットワークが断片的に点在している状態を克服することです。ドイツ、オランダ、フランスなどの国々ではすでに稼働中のステーションがありますが、特に主要な貨物輸送ルート沿いには大きな空白地帯が残っています。

水素充填ステーションをまんべんなく配置することにより、長距離輸送業者にとって充填がより予測可能になることを目指しています。と同時に6社は、水素がBEV用バッテリーと競合するのではなく、あくまでも補完する関係にあることを強調していることも注目すべき点でしょう。長距離輸送、高積載量、頻繁な運行が求められる用途では、水素は数少ない実行可能なゼロエミッション代替手段の一つだとしています。