水素の生成方法には複数存在しますが、「天然ガス由来」の水素にビル・ゲイツの投資ファンドが出資しています。“ん?”と思われた方もいらっしゃることでしょう。化石燃料由来の水素は一般的に水素否定派が槍玉にあげる話ですものね。

当たり前ですが天然ガスは長年、様々な場所で活用されていますからインフラが整っています。だから容易に天然ガスを得られる場所で、水素生成して水素を用いることで脱炭素を図れる、というわです。そこに目をつけたのがモダン・ハイドロゲン社です。モダン・ハイドロゲンは2015年に、ビル・ゲイツの支援を受けて元マイクロソフト研究者ネイサン・マイアーボルドが創設したイノベーションハブ、インテレクチュアル・ベンチャーズの支援を受けてスタート。当初は「モダン・エレクトロン社」と名乗り家庭用の暖房器具や給湯器と組み合わせて、排熱を電気に変える装置の開発に取り組んでいました。

そんな同社、最近は水素の生成研究・開発にシフトしているんです。なんでも天然ガスや、家畜の糞などのバイオガスから水素を生成するメタン熱分解反応器の開発が進められているそうです。もちろん、副産物はありますがCO2ではなく、アスファルトに用いられるような「固体炭素」なのだそうです。つまりCO2の排出量はゼロ。

メタン熱分解反応器に天然ガスまたはバイオガスがシステムに入ると、メタンが固体の炭素と水素に分解するまで加熱されます。固体の炭素と水素は分離され、炭素はシステムから取り除かれます。
モダン・ハイドロゲン社のメタン熱分解反応器では生成した一部の水素は再利用することで継続的に熱を供給するそうです。残りの水素は、暖房、モビリティへの燃料供給、発電に利用できる、とのことです。また、メタンの熱分解によって生成される固形炭素は、大気中の二酸化炭素に影響を与えることなく自然廃棄されるか、アスファルト、医療機器、航空宇宙用複合材料、コンクリートなどの産業の原料として使用されるそうです。

日本でもあいち産業科学技術総合センター産業技術センター、株式会社伊原工業、学校法人東京理科大学、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学、国立大学法人静岡大学などが共同でメタン熱分解反応器の研究開発が進めています。

固体炭素がどのくらいのコスト回収につながるのかわかりませんが・・・、メタン熱分解反応器の今後を左右する意外と大きな鍵を握っていそうな雰囲気ですね。

もとい。

そんなモダン・ハイドロゲン社に多忙極めるビル・ゲイツが姿を現した、ということがちょっと話題になっています。メタン熱分解反応器から生成された固体炭素を用いて、道路修理してみた、ってお話です。それだけ期待している、ということなのでしょうね。最近、天然水素もようやく話題になってきていますし、やっぱり本当に脱炭素を進めるなら水素だと思うんですよね。