2019年9月25日付けの「日本海事新聞」で目を引く記事がありました。オランダの大手海運会社、CMBがアントワープ-ブルージュ港湾公社のためにタグボート「Hydrotug 1」(船名)を新造する、という話でした。

具体的にはスペインのアーモン社が造船し、CMBの子会社、CMBテック社とアングロ・ベルジャン・コーポレーションのジョイントベンチャーである「BE2HYDRO」社の水素燃料エンジンを搭載する、という流れでした。

2021年秋の就航を目指す、と報じられていましたが、ようやくアーモン社から引き渡しが完了し、BE2HYDRO社のエンジンを搭載する、という段階に到達です。恐らく、COVID19騒動を受けたほか、ロシアのウクライナ侵攻もあって、建造に遅延が生じたのでしょう。

Hydrotug 1が搭載するのはV12エンジン2基で、デュアル燃料(ディーゼルと水素)での燃焼が可能・・・、と言われています。ただ、BE2HYDRO社のエンジン解説動画を見る限りでは、どちらかを燃焼できる、というよりも水素を燃焼させるために、ディーゼル燃料を“発火剤”として用いるようですね。

BE2HYDROの水素燃焼エンジンは既存のディーゼルエンジンにも“後付け”できるのがポイント。既にベルギー・オステンデ港で運用が開始されている、「Hydrocat 48」(船名)と呼ばれる洋上風力発電アクセス船(Crew Transfer Vessel=CTV)ではMAN製のディーゼルエンジンを水素燃焼化しているそうです。

また、既に水素の配送ルートとなっているオステンデ港なので、Hydrotug 1の運用もこちら年明け初春に始まるそうです。デュアル燃料だったら温暖化効果ガスゼロじゃないじゃい、というツッコミはごもっともです。現状、85%の削減が見込まれており、2050年までの温暖化効果ガスゼロに向けての足掛かり、として導入されるんです。

強靭なパワーを必要とするタグボートが水素で本当に運用できるのか否か、要注目です。