2025年4月9日、ヤンマーホールディングスの子会社であるヤンマーパワーテクノロジー株式会社が、ノルウェーの船級協会DNVから海洋用水素燃料電池システム「GH320FC」の基本承認(AiP)を取得しました。この認証により、海洋産業の脱炭素化に向けた新たな扉が開かれることになります。

GH320FCは、海洋用途向けの次世代動力源として設計されており、様々なタイプの船舶への設置が容易になる革新的な設計が特徴です。システムは複数のユニットを並列接続することが可能で、水素燃料電池モジュールの数を柔軟に調整できるため、異なる船舶タイプや運航形態における多様な電力要件に対応できます。沿岸旅客フェリー、内陸水路貨物船、港湾サービス船、そしてヨーロッパ全域の低排出ゾーンやゼロエミッションゾーンでの運航などの用途に特に適しています。

DNVマリタイム部門エンジン・圧力機器部門責任者のオラフ・ドリューズ氏は「クリーンな再生可能燃料と組み合わせた燃料電池は、この課題に対応する高効率でスケーラブルな電力ソリューションです。DNVは、このAiPをヤンマーに授与し、このような未来志向の企業とパートナーシップを組み、海運業界の次世代船舶の基盤づくりに貢献できることを大変嬉しく思います」と述べました。

今回の基本承認取得により、ヤンマーパワーテクノロジーの海洋用水素燃料電池システムは、国際的な船級協会による技術的信頼性の証明を得ることができました。これによりヨーロッパを中心とした海外市場での展開が本格化し、海洋産業の脱炭素化に大きく貢献することが期待されます。

興味深いことに、この重要な認証取得のニュースは海外の海事業界専門メディアや技術系ニュースサイトでは広く報じられているものの、日本国内のヤンマー公式サイトやメディアではほとんど取り上げられていないようです。何か理由があるのでしょうか?

ヤンマーは2023年から水素燃料電池システムの商品化を開始し、実際に日本の沿岸旅客フェリー「HANARIA」に搭載するなど実績を積み重ねており、今回のDNV認証は海外展開への重要な一歩となります。

*基本承認(AiP:Approval in Principle):船級協会が新技術や新設計について、基本的な安全性と実用性を認定する制度